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落第忍者乱太郎及び忍たま乱太郎についての話を。
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ゴールデンウィークを前に、ヴァレンタインネタ。
現代パラレルです。
こんなに長いの書くの、初めて。

「久々知先輩、コレ、良ければ食べてください」
二月十四日、製菓業界の陰謀渦巻くヴァレンタイン。
そう言って綾部から渡されたのは、可愛らしくデコレートされた薄紫色の包みだった。
もしや、コレは…、
「これってヴァレンタインのチョコ?」
「はい。手作り、です」
…神さま仏さまありがとう!
綾部の手料理が食べられるのなら、死んでも悔いはありません。
「料理得意なのか?凄いな…」
ラッピングペーパーを剥がすと、出て来たのは木綿豆腐のパックだった。
「絹ごし豆腐の方が良かったですか?」
…そーゆー問題ではないと思うが。
ぺろりと上部のフィルムを捲ると、ぶよぶよした、ココア色の物体が現れた。
知らず、冷たい汗が頬を伝う。
「あの、これって…」
「豆腐を裏ごしして、ココアと混ぜて、ゼラチンで固めました」
「へぇ…何で、ヴァレンタインで豆腐なんだ?」
「久々知先輩って、お豆腐好きですよね」
「そ…そうかな…」
そんな事はない、と思う。

大丈夫だ、ココアとゼラチンでチョコゼリー、それに豆腐が混ざっただけだ。
豆腐は殆ど味がないから、どんな食材とも合う…はず…はずだ。
ミミカちゃんだって、豆腐とバニラアイスを混ぜていただろう!
決意を固めて、綾部から差し出されたスプーンで物体Xをひと口掬う。
ゼラチンで固めたのなら、ぷるんとしている筈なのに、何故かでろり、とスプーンの上で崩れる。
「…ゼラチンで固めた…んだよなぁ…」
「何故か固まらなかったので、水溶き片栗粉でとろみを付けてみました」
「片栗、粉…とろみ…」
ぐらり、と地面が崩れるような感覚がした。
「ダマにならないよう水で溶くのって、難しいんですよ」
あぁ…ダマらしきつぶつぶが、サイコロ状に切った豆腐に混じって浮いている。
…あれ、豆腐とダマの狭間で、何か、白くて丸っこいものが、見えるんだけど。
それはスプーンで突付くと、ぶよんと弾んだ。
「魚の目玉って、栄養満点なんですよ」
どうしよう、グロの世界に突入してしまった。
どうしよう、俺。
「頑張って作ったんです」
駄目押しの、綾部のひと言。
ここまで言われて食べないなんて、男が廃るってもんだよ。
…と、己を無理矢理奮い立たせる。

俺は、意を決して、物体Xを口に運んだ。
それは、ずるり、と口腔内に滑り込む。
好きな相手が作ったものなら、例えナメクジかスライムの親戚みたいな物体でも、食べられるものなんだな。
うんうん。
危険信号を発する脳を強引に無視して、ごくり、と嚥下する。

…はっきり言って、くそまずいと言う評価ですら甘過ぎると思った。
そんな感じのシロモノだった。
「お…美味しいよ、綾部…」
飛びそうになる意識を何とか保ち、爽やかな笑顔でそう応える。
爽やか…だったはず…だ…。

それから数時間の記憶がない。

*

目が覚めると、白いカーテンの隙間から、西日が差し込んでいた。
四方をカーテンで囲まれた、どうやら、保健室のベッドの上らしい。
ごそごそと起き上がる俺の気配を察し、当番の保健委員がとたとたと駆け寄って来る。
「善法寺せんぱーい、気が付いたみたいですよ」
「分かった。今行く」

「とりあえず、これ飲んでね」
そう言って保健委員長――善法寺先輩に手渡された胃薬を、コップの水で流し込んだ。
眼鏡の中等部一年――猪名寺に手渡されたタオルで額の汗を拭い、
「あの…俺、一体」
「綾部くんがね、君が倒れたって教えてくれて。高等部三階廊下(ゲンバ)に駆け付けたら、」
「豆腐パックの傍らで先輩が気絶していて、」
「保健室に担架を取りに引き返して、その途中で留三郎とバッタリ会ったから、君運ぶの手伝って貰って」
「いや…何かご迷惑掛けてしまって…食満先輩にも」
「良いの良いの、これが僕らの仕事だから。まぁ、留三郎はブツブツ言っていたけど、気にしなくて良いからね」
手をひらひらやって、先輩は微笑む。
如何にも、人の良さそうな。
その隣で、猪名寺も苦笑交じりに頬を掻いていたが、
「あ、」
何かを思い出したのか、猪名寺の動きががちん、と止まった。
「どうしたの、乱太郎くん」
「理科の追試、忘れてました…」
一年二組の担任の如くに、猪名寺の顔が青褪める。
「後は僕ひとりで大丈夫だから、早く行って来なさい」
「い、行って来まーすっ!」
慌てて、猪名寺は保健室を飛び出して行った。

後輩を見送ってから、善法寺先輩は俺に向き直る。
「ところで…原因はあの豆腐パックの中身?」
「え…ぇと…そう、です…」
誤魔化そうとしたが、先輩相手に誤魔化しきれる筈もなく。
「綾部くんの手作りチョコ?」
「チョコと言うか、チョコゼリーと言うか、スライムのオトモダチと言うか、謎の物体X…あ、綾部は悪気があってこういう料理を作ったんじゃあ…」
「分かっているよ。その事だったら仙蔵から聞いた事あるからね。綾部くんの料理の腕」
先輩は苦笑を浮かべた。
「そう、ですか」
「さっき仙蔵に電話してみたんだけどね、君が寝ている間。二時間気を失っただけで済むなんて、奇跡の部類らしいよ」
…通常はもっと凄いのか、綾部'sクッキング。
「試しに文次郎に食べさせた時はICU送りになった、って言ってたけど、仙蔵」
…アイルランド・クリケット協会、じゃあなくて…集中治療室、だっけ?
さあぁ、と血の気の引く音が、したような。
「あぁ、大丈夫だから。文次郎もすぐ元気になったそうだし」
先輩は、両腕をブンブンやって、慌てて取り成した。
「げ…現代の医療は、進んでいますから、ね…」
俺も、青褪めつつも、必死でフォロー。
…誰に対してフォローしているんだ、俺。

「でも、スライムのオトモダチでも食べてしまうくらい、好きなんだね。綾部くんの事」
先輩は、慈父のように穏やかに微笑んだ。
観世音と言うよりは、それこそマリアに近い。
先輩の実家は、お寺だと言う話だが。

*

失礼しますと一礼して、保健室の戸を開ける。
風が流れて、ふわり、とミルクティー色の髪の毛が舞った。
「綾部、」
相変わらず読めない表情の綾部が、廊下の壁に背を預け、ぼーっとしていた。
壁と天井の、境目辺りを何となく眺めているようだ、多分。
「こんにちは、先輩」
綾部は俺に気付いて、凭れていた身を起こした。

「一緒に、帰るか?」
「…先輩の家、僕の家の方向と真逆じゃありませんでしたか?」
「送って行くよ」
差し出した左手はスルーされてしまったが、案外良い日だったな、と思い起こす。
…あれ、良い日、かな…?
そんな事を考えて、ぼけっとしていたら、先にすたすたと進んでいた綾部がくるり、と振り向いた。
「先輩、エンゼルフレンチが食べたいです」
「…じゃあ俺、ポン・デ・リング」
言いながら、綾部の元に駆け寄る。
「何時の間に消えたんでしょうね、TOFUドーナツ」
言われて見れば、近頃見ないな。
いや、豆腐は置いといて。

俺にとっては良い日だ、うん。

***

久々知の鞄は、乱太郎が運んでくれていました。
そう言う事に、しておこう。
ちなみに、理科の担当は土井先生。

2009年7月17日に、無意味に一文足しました。
左門と富松の中の人が出ていた食育アニメネタ。
僕は!まいんよりミミカが好きなんだ!

綾部の髪色は、うちではミルクティー色てかシャンパン色。
コピックスケッチのE71番。
これよりは濃い目。
こーゆー感じ、かなぁ?
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プロフィール
HN:
湖濱江波
性別:
女性
趣味:
読書・戦国史
自己紹介:
ある日突然忍たまに興味を持ち現在に至る。
ちなみに原作派。

好きキャラは孫次郎・三木ヱ門・兵太夫。
無条件で格好良いと思うのは照星さん。
好きカプは孫兵孫次郎・長仙。
くくあやとかさこふしとかけまかずまとかが気になる今日この頃。
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